Board Game Design Advent Calendar 2016

世界に挑戦してみよう、の話

 

●はじめに

 この記事は、Board Game Design Advent Calendar 2016( http://www.adventar.org/calendars/1778 )の9日目の記事として作成しました。

(諸事情で公開が若干おくれてしまいましたが、どういうわけかついさっきまでフランスに行っていたので、フランス時間ではまだ12/9なのでセーフです(詭弁))

 

 「鷹海って誰よ?」という人は、ゲームマーケット公式サイトのまどりやのページ( http://gamemarket.jp/booth/gm1287/ )を見てもらったり、この記事をアップロードした時点で最新ではないのですがこのページに作成したゲームの情報なども載せてますので、興味がありましたら見ていただけると幸いです。

 

●いきなり大脱線する話

 文章を書くときのテクニックとして、「最後に書かれた事がより強調される」というものがあります。

 具体的に言うと、「いいこと・悪いことの2つがあったとき、悪いことは書きつつ、最後にいいことを書くと、最後に書かれた物(いいこと)が印象として残りやすい」というものです。

 一例として、以下の文章をそれぞれ見てください。「文章例」の上にマウスカーソルを置くと、文章が見えるようになります。

 

・Pokemon Go!は【文章例1】

・Pokemon Go!は【文章例2】

 

  2つとも内容としては同じ物を書いているのですが、まったく違う印象になっていると思います。

 これは心理学に基づくものであるようで、文章には限らないことだったりもします。「アロンソンとリンダーの心理実験」で検索してみるといいかもしれません。

 

 悪い部分があった場合、それをまったく伝えないというのは確かに良くないのですが、単に伝えても相手に悪い印象しか与えない事が多かったりします。特に、それを不特定多数の人が見ているような状況ですと、それを見た他の人も同じ印象を持ってしまう可能性もあったりするのです。

 でも、最後に「いいこと」を書くと、いいことの方の印象が強くなるため、悪いことの悪い印象を大きく軽減することができるのです。

 

 そりゃ怒られるより褒められた方が気分いいですものね?

 

 ですので、文章を書くときは、どんなにヒドイ内容でも、最後にはなにかしらいいことを書いたり、褒めてあげる内容にしてあげると、それを読んだ人が悪い印象を持ちにくくなると思いますので、とてもオススメです。

(タイトルをネガティブな感じにすると見てもらいやすくなるとかいうテクニックもあったりしますが、今回は割愛します)

 どうしても褒める内容を作れないという時は(実際の所、けなす内容っていくらでも出すことはできるのですが、褒める内容っていうのは想像以上に難しかったりします)、最後に小話でも初めてオチをつけたり、締めに「とにかく○○はいいぞ!」とだけ書いてみるのもいいかもしれません。

 

 

 ……読む人が読むと、この部分は某レビューについてケンカ売ってる内容に見えてしまう人もいるかもしれませんが、なにも反応が無いよりはなにかしらレビューをしてもらった方が嬉しい人も多いので、気にせずどんどん書いていただけると嬉しいですね(早速テクニックを使用)

 

 

 で、なんで始めにこのような話をしているのかというと、本題がこの手法で書かれているから、というのを説明するためなのでした。

 

 

●本題:世界に挑戦してみよう、の話

 ボードゲームの発表の場は、日本ではゲームマーケットに出展するのが一番敷居が低いと言えるでしょう。

 しかし、ボードゲームを遊んでいるのは日本だけではありません。当然、世界中で遊んでいる人も非常に多いのです。

 せっかくですから、作ったゲームを世界中の人にも見てもらうのもいいかもしれません。

 現状、ゲームマーケットは約1万人、エッセンシュピールやGENCONは1日約5万人の来場者がいます。非常に雑に計算しても、5倍ぐらい露出度が増え、5倍ぐらい売れる可能性も考えられるのです(机上の空論すぎますが……)

 

 で、海外にゲームを持って行って、世界中の人に見てもらおうとすると、日本でゲームを出展するよりもハードルが10倍ぐらい上がってしまうのです。

 

 明確な目的・目標があれば、個人で苦労して海外で出展したりするのもいいのですが、日本では“海外に日本で作ったボードゲームを紹介しよう”という活動をしている団体がありますので、そこに乗っからせてもらうのが一番安全で、乱暴に言うと「楽」なのです(参加ゲームの審査もあるのですが、ゲーム賞を受賞するレベルの審査は要求されないので、その点の敷居は低いとも言えます)。

 

 というわけで、今回はそんな活動をしている“ヤポンブランド”に参加してみた感想などを紹介してみたいと思います。

 「まどりや」は、2015年にヤポンブランドに参加しまして、「IdleConclave×MillionHitChart」を海外で売ってきてもらいました(2016年はゲーム出展はしてないのですが、お手伝いという形で参加しています)

 

 

 ところで先日、スパ帝国様のサイトで「ゲームマーケットに挑む人向けガイド」( http://spa-game.com/?p=4830 )という記事が公開されました。

 かなり現状に即していていい記事ですので、ぜひ読んで見ることをオススメします。

 

 この記事形式は非常にわかりやすく、かつ完結に状況説明ができると思いますので、この形式で期待できないこと・期待できることを紹介してみたいと思います。

 

 

○ヤポンブランドに参加しても期待できないこと

・契約

 参加したゲームは極力海外のゲーム出版社様に売り込みをしていますが、全部が全部契約できるとは限りません。

 あのカナイセイジさんですら、海外契約に至っていないゲームが存在します。

 

・利益

 色々なことに、とにかくお金がかかってしまいます。

 参加費については明確に出ているのですが、これ以外に見えないお金として「ルールの翻訳料」「輸送料(関税)」「現地に行くなら渡航費や滞在費」がかかります。

 また、ゲームの販売価格も、海外との通貨格差の影響や「海外の人は“同人”という概念が無く、商業ゲームとして卸値などを設定する必要」があるため、日本で売るときよりも(ゲームショップに委託販売するよりも)大幅に低くなってしまう可能性があります。

 “海外に売りに行く”感覚だと、期待ハズレになる可能性が非常に高いのです(だからヤポンブランドは、海外に“ゲームを紹介する”活動です)

(ちなみに、海外では値段が箱の大きさに比例することが多いので、どうしてもという場合は箱を極力大きくするという裏技もあるかもしれません)

 

 

 

○ヤポンブランドに参加して期待できること

・海外版ルール

 上記で「翻訳料」がかかってしまうことを紹介していますが、その結果「英語」「ドイツ語」「フランス語」のルールが手に入ります。

 

・契約

 契約は確かに期待はできないのですが、ヤポンブランド自体での売り込みは積極的に行っているので、契約が成立することもあります。

 ヤポンブランドは活動期間が長いこともあり、世界各国のゲーム出版社とのコネクションが多いので、どこかの出版社が興味を持ってくれることもあります。

 現状、1日で“約300以上の新作”が出るゲームマーケットに出展した“だけ”では目立つのは厳しいのですが、ヤポンブランドに参加すれば“約20の新作”のうちの1つとして、ゲーム出版社に対して目立ちやすくなる期待値は大きく上がります。

 

・人脈

 ヤポンブランドでは、エッセンシュピールで販売するゲームをみんなで説明できるようにするため、定期的にゲーム会が開かれています。何度か行われるので、現地に行けない人でも積極的に参加・協力すれば、参加している人たちと自然と仲良くなることができるでしょう。

(このあたりは他の定例ゲーム会と同じようなものです)

 この人脈が何に有効かというと、このゲーム会などで時間に余裕があるときには、ヤポンブランドの出展と関係ないゲームのテストプレイに付き合ってくれる事もあるということです。

 ヤポンブランドの参加者は、いわゆるゲーマーな人も多く、また多くのアナログゲームを作っているような経験値の高い人が多いので、非常に有用な意見をいただけることもあります。

 また、人脈は広ければ何か別のお仕事がもらえたりすることもあったりします。近日発売予定の「うしおととらロストスピアー」(ムービック)ですが、実はヤポンブランドに参加していた事がきっかけの1つで、わたし鷹海がこのゲーム製作に関わることができていたりもします。

 

・経験

 「エッセンシュピールに行くとボードゲーム感が変わる」というのは、エッセンシュピールに行った人が良く語る言葉です。

 しかし、未経験者が1人でエッセンシュピールに行くというのもなかなかハードルが高い物です。もしかしたら海外旅行すら行ったことが無い人もいるかと思います。

 そんな人でも、ヤポンブランドに参加すれば、他のメンバーと一緒にエッセンシュピールに行く事ができます。他のメンバーがいるので、困ったらことが起きたら(いっぱい起きそうですが)その人たちに頼ることができるのです。もっとも、現地ではほとんど何かしらのスタッフとして協力する必要はあるのですが。

 英語ができないから行けない、という人も多いかもしれませんが、ぶっちゃけた話、英語が話せなくても、困ったことが起きたら他のメンバーたちに聞くことができるので、割となんとかなります。

 

 都合でエッセンシュピールに行く事ができない、という人でも、問題ありません。

 こういう記事を書きつつも、まだわたしはエッセンシュピールに行けていない状況ですので……(汗)

 

 

 そんな感じで、ヤポンブランドの活動に興味がありましたら、ゲームマーケット2016秋では「I15」( http://gamemarket.jp/blog/34661/ )にブースがありますので、簡単に話を聞きに行くだけでもしてみてください。こんなゲームでも参加できるのか迷ったら、悩む前にまずは聞いてみることをオススメします。

 また、ヤポンブランドのゲーム会や定例会は東京で行われていますが、関東近郊以外に住んでいる人でも参加できます(ManifestDestiny様は北海道在住ですが、ヤポンブランドに参加しています)。ゲームマーケット2017神戸では「ROUTE11」にて簡単な相談などができるようになる予定とのことですので、気になった人は冷やかしでもいいので行ってみるといいかもしれません。

 

 

 という、ゲームマーケット2016秋直前の、ヤポンブランドの宣伝コラムでした(何)

 とにかくヤポンブランドはいいぞ!(強引なオチ付け)

 

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 明日はいよいよゲームマーケット2016秋の直前です。前日ゲーム会などが各地で行われると思いますが、Board Game Design Advent Calendar 2016mmysk様が記事を公開してくれる予定ですので、ぜひそちらもチェックしてくださいね。